机に向かって一文字書くたび、木の軸がやわらかく手に沿う感覚があります。シャープペンほど無機質でもなく、削りかすの出る普通の鉛筆でもない。木を握って、削らずに書く。北星鉛筆の「大人の鉛筆」は、その中間にすっと立つ一本です。手帳を開いた朝や、思いつきをさっと書き留めたい夜に、迷わず手が伸びる机上の相棒になってくれます。

削らずに書ける、2mm芯の木軸

書きだしでつまずかないのが、この道具の心地よさです。芯が丸くなってきたら、後ろのノックを押すだけ。しゅっと新しい芯先が顔を出し、削り器もカッターも要りません。仕組みとしては芯ホルダーに近く、太めの芯をノック機構で少しずつ繰り出して使います。

芯は2mmと太めで、鉛筆と同じ黒鉛の芯を繰り出して使います。不純物の少ない国産の2mm芯が、紙の上に濃くやわらかな線を落としてくれます。鉛筆の黒々とした筆致をそのままに、削る所作だけを省いた、そんな書き味です。

手に馴染む、インセンスシダーの木軸

軸に使われているのは、アメリカ産のインセンスシダーです。木の軸は手のひらにやわらかく沿い、しっかりと握りこめます。長い文章を書いても手が滑りにくい、落ち着いた持ち味です。

北星鉛筆は、本体の両端に金具を配して重心をやや先端側へ寄せ、長く書いても疲れにくくしていると説明しています。ペン先寄りに重さがあると、余計な力を入れずとも自然にペン先が紙へ向かい、手首がすっと動きます。

インセンスシダーは、世界の鉛筆材として古くから使われてきた香り高い針葉樹です。木肌はまっすぐで削りやすく、書いているうちに、ほのかな木の香りがふと立ちのぼることがあります。プラスチックの筆記具にはない、木ならではのささやかな楽しみです。

削って使うなら(専用の芯削り器)

2mm芯は普通の鉛筆芯より太いので、そのままだと線に少し幅が出ます。細く尖った線を引きたい、スケッチで細部を描き込みたいというときは、別売の専用芯削り器(OTP-680NST)を合わせるという選び方があります。本体単品でも書くことには十分で、削り器はあくまで用途に応じた追加の選択肢です。

こんな机まわりに

手帳への書き込み、スケッチやアイデア出し、宛名書きや署名など、「書くこと」そのものを味わいたい場面によく合います。均一で軽いシャープペンよりも、木を握る手ごたえや、濃く伸びる鉛筆らしい線を選びたい人に向いています。

反対に、常に細く均一な線を保ちたい製図用途や、シャープペンの軽さ・細さを重視する人には、やや太めのこの書き味は好みが分かれるところです。まずは日々の走り書きや手帳から取り入れると、木軸の心地よさが素直に伝わります。

お手入れ・長く使う

木の軸なので、水濡れや過度な乾燥は避け、汚れたら乾いた布でさっと拭く程度で十分です。芯がなくなっても替え芯を補充すれば、軸はそのまま長く使い続けられます。一本を手入れしながら育てていける、息の長い道具です。

北星鉛筆は、鉛筆づくりで出るおがくずを再生素材などに活用する資源循環に取り組んでいます。書く道具が、使い終わったあとまで木と結びついているのは、木軸を選ぶうれしさのひとつです。

まとめ

手を動かして書く時間そのものを、少しだけ豊かにしてくれる。「大人の鉛筆」は、木を握る感触と鉛筆らしい線を、机の上にそっと取り戻してくれる筆記具です。書くことが少し好きになる一本を探している人に、手に取ってみてほしい道具です。